本日は投資の神様、ウォーレン・バフェット氏が投資先を選定する際に必ず確認している財務指標について解説していきます。
なお、この記事を作成するにあたり「バフェットの財務諸表を読む力」を参考にしました。
初心者投資家はもちろん、投資経験がある方でも非常に勉強になる本だと思いますので、ぜひチェックしてみてください。
- 平均年収1,000万円越えの商社勤務の20代前半会社員
- 社会人2年目から貯金350万円をもとに株式投資を開始
- 現在はコアでS&P500と全世界株式、サテライトでNASDAQ100ETFや米国個別株を保有
バフェットの投資先選定の大前提となる考え方
まず初めに詳細な財務指標の解説に入る前に、バフェットが投資先候補を探す際に大前提としている考えを2つ紹介します。
「そんなもんか。。」と思うかもしれませんが、バフェットのように長期間保有して市場平均を大幅に上回るリターンを得るには大切な考えです。
すぐれた企業は消費者の心の一部を所有している
バフェットが投資先候補を見る際に1番に考えるのは、その企業が消費者の心を握っているか?という点です。
言い換えれば、その企業には長い間商品やサービスにお金を払ってくれるお客さんがいるのか?という点を最も重視しています。
業種によって異なりますが、以下の3つの内1つでも明確に「イエス」ということができないのであれば投資先候補から外れることになります。
- 他にはないユニークな製品を売っている
- 他にはないユニークなサービスを売っている
-
一般大衆からの安定した需要がある製品もしくはサービスを低コストで仕入れて低コストで売っている
実際にバフェットが保有している銘柄をみても上記の3つの問いのうち必ずひとつは「イエス」と断言できる競争優位を持っている企業が多いですね。
ex,)コカ・コーラ、ハーシーズ、P&G、ムーディーズ、アメリカン・エキスプレス、フォルマート、コストコ
永続性は金持ちへのチケットである
バフェットが企業の財務諸表を見る際に最も重視するのが、個々の数値ではなく数値の「一貫性」です。
「一貫性」があるからこそ長期的に多くの利益を生み出し、結果として多くの配当金や多額のキャピタルゲインをもたらしてくれるという訳です。
例えば、ある年に大幅な利益を上げてもその翌年に減益となっているような企業はバフェットから見たら一貫性がなく投資対象になりえません。
実際に「一貫性」を判断するには以下のような問いを投げかけてみるといいでしょう。
- 一貫して売上高が伸びているか?
- 一貫して高い粗利率を維持しているか?
- 一貫して負債をゼロに、もしくは低い比率を保っているか?
ここでバフェットのの名言です。
「永続的優位性を持つ企業を探すことは”一貫性”を見つけるゲームに参加することだ」by バフェット
バフェット流損益計算書の読み方
(写真)
では、ここからは実際にバフェットが財務諸表を読む際にどのような指標を参考にしているのか解説します。
まずは会社の1年間の売上・利益・費用を表す損益計算書からご説明します。
※本書では基本的なことからマニアックなことまで記載されており、その中で個人的に印象に残っている点を厳選しております。
利益そのものの数字よりも「利益の源がどこにあるか」が重要
損益計算書を見る際に「今年の営業利益は?」「今年の当期純利益はいくらか?」という点を重視してしまいがちです。
しかし、バフェットは決算書に記載されている数値以上に「その利益を生み出している利益の源がどこにあるか」を重視します。
利益の源を理解することで一過性の利益ではなく長期的に利益を生み出すことができるのかを判断します。
では、どうやって利益の源を理解すれば良いのか?という声が聞こえてきますが、これは地道にその企業のビジネスモデルを研究していくほかなりません。
やはり投資で長期的な利益を得るには地道な努力が必要不可欠ですね。
様々な企業のビジネスモデルをざっくりと勉強するには以下の書籍が参考になります。
永続的優位性を持つ企業は、高い粗利率を示す傾向がある
バフェットが損益計算書の中でまず最初に確認するのが粗利と粗利率です。
粗利は純粋なモノやサービスの売買で稼ぎ出す収益であり、損益計算書で1番初めに記載される利益指標となっています。
そのため、粗利率が低い企業は長期的な成長は見込めないと言えます。
具体的には対象企業の粗利率が40%以上だと何らかの競争優位性を有している可能性が高いが、20%以下だと熾烈な競争環境に属している可能性が高いと言えます。
販管費は一貫して低いことが望ましい
バフェットは営業利益だけでなく、営業利益を求める際に差し引く販管費にも着目しています。
一般的に販管費にはビジネスを行う上で必要になる人件費・研究開発費・広告費など様々な費用が計上されていますが、これかは少なければ少ない方が良いということです。
ではどれくらいの水準が良いのかというと、粗利に対する販管費が30%以下なら優良企業、30%〜80%なら準優良企業、100%を超えている場合は論外と述べています。
販管費粗利率というのはあまり耳にしたことはないですが、ぜひ投資先選定の際に参考にしてみてください。
営業利益に占める支払利息の比率は企業の危機レベルを表す
対象企業の貸借対照表に計上された負債の額が多くなるほど支払利息も多くなるが、バフェットはこの支払利息の額も確認します。。
そしてバフェットは永続的競争優位を有する企業は支払利息をほとんど、もしくは全く計上しないというと述べています。
例えば、バフェットの投資先として有名なP&Gの営業利益に対する支払利息の比率はわずか8%です。
反対に競争の激しいタイヤ業界に属するグッドイヤーは営業利益の49%を支払利息に充ています。
営業利益に対する支払利息の割合は業界において違いがあるが、ある業界において営業利益に占める支払利息の割合が最も低い企業は、競争優位性を持っている可能性が高いと言えます。
税引後純利益が右肩上がりか確かめる
損益計算書の1番最後に表示されるのが税引後当期純利益であるが、バフェットはこの数字が長期的に右肩上がりであるかを重視します。
年度によっては綺麗に右肩上がりにならない場合もあるが、単年度で判断するのではなく長期的にみて右肩上がりのトレンドを構築できているかが重要になります。
ここで注意したいのが、投資先を判断する際の指標として一株あたり純利益を掲載していることがよくあるが、その企業が自社株買いを行い発行済み株式総数を減少させると一株あたり純利益を押し上げる効果があります。
そのため、純利益の総額ベースでは減少しているにも関わらず一株あたり純利益で見ると増加している用に見えてしまうため、バフェットは純利益の総額で判断します。
では、どれくらいの数値であれば長期的競争優位を有しているといえるのかというと、売上高に占める純利益の割合が20%以上であると競争優位性を有していると言えるでしょう。
実際、バフェットのお気に入りのコカ・コーラは21%、ムーディーズは31%もの売上高純利益率を記録しています。
反対に、売上高純利益率が10%を下回る企業は熾烈な競争環境に属しており、長期の投資先としては魅力的ではありません。
バフェット流貸借対照表の読み方
ここからはバフェットが貸借対照表を読む際に確認している指標について説明していきます。
財務良好な企業に投資する際に貸借対照表の分析は必須になるので、ぜひ参考にしてみてください。
総売上高に占める売掛金の割合で競争優位を確かめる
企業が製品を顧客に販売する際は基本的に現金ですぐにお金が入ってくるのではなく、売掛金という形で一旦処理し、販売から2ヶ月または3ヶ月後くらいに入金されるケースが多いです。
競争優位性を持たない企業は他の企業との差別化を図ることができない場合はこの売掛金の支払い期限を遅らせてビジネスを継続することがあります。
一方で製品に競争優位を持っている企業は支払条件ではなく製品で差別化が可能であり、競争優位を持たない企業に比べて売掛金を早く回収できます。
したがって、もしも売上高に占める売掛金の割合が一貫して同業他社よりも低い場合は何らかの競争優位を有している可能性が高いと言えます。
流動比率で企業の優劣を見分けることはできない
投資先の財務健全性を流動比率で確認している方は多いのではないでしょうか?
※流動比率=流動資産÷流動負債
※一般的に流動比率が1以上であれば財務健全性は高いと言われる
しかし、バフェットは流動比率では永続的な競争優位を有する企業を見分けることはできないと述べます。
なぜならバフェットが投資している企業の多くが財務良好とされる流動比率1を割っているためです。
具体的には、コカ・コーラは0.95、ムーディーズは0.64となっています。
これらの永続的競争優位を有する企業はその強力な収益力故に意図も簡単に流動負債の返済が可能であるため、負債の返済よりも配当や自社株買いによる株主還元を積極的に行います。
その結果、現金保有を減少させ流動比率を1以下に押し下げているというわけです。
永続的競争優位を持つ企業はほとんどが長期借入金が少額
長期借入金とは1年超で返済期限を迎える借入金のことで、新たに事業投資や企業買収を行う際などに用いられる。
永続的競争優位を有する企業はわざわざ銀行に借入せずとも自社が稼ぎ出す潤沢なキャッシュで賄うことができるため、必然的に長期借入金は少なくなるという訳です。
具体的な指標としてその企業の長期借入金は当期純利益の何年分に当たるのかをチェックしたい。
3〜4年分である場合は長期的競争優位を有すると判断しても良い。
自己株式調整済み負債比率が0.80以下
企業は事業活動の資金を銀行等の借入である負債と、株主からの出資金である自己資本で調達している。
先ほど説明したように永続的優位性を持つ企業は潤沢な収益で事業資金を賄うことができるため理論的には負債比率は小さくなる。
負債比率=負債額合計÷純資産額合計
しかし、永続的優位性を持つ企業は潤沢な純資産を自己株式の取得に充てることが多く、負債比率が高くなり競争優位性を持たない企業のそれと同等の数値になってしまうことがある。
※自己株式取得は純資産項目にマイナスに作用し純資産額を減少させるため
そこで、バフェットは貸借対照表に計上されている自己株式の価値を加えた負債比率を見ることで永続的競争優位性を持つ企業を見逃さないようにしている。
具体的な指標として、自己株式調整後の負債比率が0.80以下であれば永続的競争優位性を有している可能性がある。
バフェット流キャッシュフロー計算書の読み方
最後にバフェットがキャッシュフロー計算書で確認している指標について説明します。
キャッシュフロー計算書とはその名の通りキャッシュ(お金)のフロー(ながれ)を表すものになります。
詳細な説明は割愛しますが、最近は損益計算書に計上されている利益だけではなく、しっかりキャッシュも回収できているか、という点も重要視されているので必ず確認したいところです。
永続的競争優位を示す企業は資本的支出が少なくなる
バフェットは営業活動によるキャッシュフローはもちろんのこと、投資活動によるキャッシュフローにも着目します。
特に投資活動によるキャッシュフローの中の「資本的支出」を重視しています。
資本的支出とは企業が土地や設備、また特許等の無形資産を取得する際に支出されるキャッシュを示します。
企業によって様々ですが、原則的に競争優位性を持つ企業はそうでない企業と比較して事業継続のための資本的支出が少なくて済みます。
例えば、本記事で何度も登場するコカ・コーラは一株あたり利益20.21ドルのうち、4.01ドルしか資本的支出に振り向けていない。
対照的にGM(ゼネラルモーターズ)は一株あたり利益31.64ドルのうち資本的支出は140.42ドルと非常に多くの資本的支出が必要とされている。
バフェットはこの資本的支出が純利益の50%以下という状況を長期間(できれば10年間)継続している場合は永続的競争優位を持っている可能性があるとしている。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。
本日はバフェットが永続的競争優位性を持つ企業を発掘する際にどのような指標を確認しているのかを解説しました。
解説にあたり以下の本を参考にしており、本記事では記載していない事項もたくさんあるので興味ある方は是非チェックしてみてください。
では、ばい!